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ザ・戊辰研マガジン

2022年12月号 vol.62

星亮一先生のこと

2022年11月24日 15:22 by minnycat
2022年11月24日 15:22 by minnycat

星亮一先生のこと   

 私のような「西」の人間は「箱根」から東、なかんずく「東北」は地理的のみならず心理的にも遠いのです。

 2018年だったと思います。評論家のY氏から話がありました。「あなたに紹介したい作家がいる。その方の主催の会で僕がこんど講演をするのだが、紹介するから一緒に来ないか?」と。この会の皆様には叱られるかもしれませんが、私は、その作家の名前を知りませんでした。「星亮一」。かっこいい名前だなぁとだけ思いましたが、それ以上は何も考えることもなく、郡山に向かいました。初めての地です。

 駅近くのビルにある事務所を訪ねました。大方の作家はそうなのですが、そこは今まで訪れた作家先生の物書き部屋で一番の汚さでした(失礼!)いや言葉が悪いですね。足の踏み場がないほどの、ものすごい量の資料に圧倒されました。このときの最初の出会いは、私はY氏の付き人的存在でしたから、星先生と私が相対で話をする機会はありませんでした。帰京直後、先生から会社に大量の著書が送られてきました。ほとんどが会津ものでした。読んだことも手にしたこともありませんでした。

 私の従姉の夫が角川書店に勤めていたことがあり、歴史好きなので、星先生との出会いを話したところ、「オレ、その人の本をたくさん読んでいるよ」という返事でした。それもそのはず、彼は福島出身で母方の祖母が手代木直右衛門の孫というではありませんか。彼曰く、子供のころ、その祖母から会津戦争のことを話してもらったことがあるというのです。

 星亮一という作家と会津が一気に私にとってより近しいものになりました。縁です。早速、先生にインタビューし、その内容を月刊紙「ぱるす通信」に掲載しました。そして、我が社での最初の作品が『会津藩燃ゆ〈令和新版〉』。実は、原稿を見せていただいたとき、私は中身をろくに読まないで出すことを決めました。なにしろ、この作品の主人公は「梶原平馬」。私と同じ名字。ルーツが同じかもしれません。いや親戚なのかもしれません。私は「縁《えにし》」という文字が好きです。人の世の中は縁によって成り立っています。主人公の梶原平馬はきっと私と縁ある人物に違いない。天が私に「この本はお前がやれ!」と命令しているのではないか、と思ったのです。

 続いて『星座の人山川健次郎』、さらに・・・・というところで先生の急逝!

 『会津藩燃ゆ』刊行後、「花ホテル滝のや」での星先生の講演に道々し、先生と起居をともにしました。講演参加者との懇親会が終了し、部屋に戻ってきた先生は私に、「梶原さん、あんたはよく食べるなぁ。きっと長生きするよ」と笑いながら語りかけてくれました。私のことを観察していたのです(笑)。温泉の湯煙の中で、先生は次回作はどうしようかと、さまざまな構想を私に話してくれました。  亡くなる数日前だったでしょうか、先生から電話をいただきました。 「こんどは容保公でいこうと思うがどうだね?」 「そうですね、年明けに打ち合わせをしましょう!」 これが、先生と私の最後の会話でした。最後まで創作意欲は衰えていませんでした。まさに燃えていました。

梶原 純司 ぱるす出版(株)代表取締役

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