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ザ・戊辰研マガジン

2020年04月号 vol.30

映画『FUKUSHIMA 50』

2020年03月29日 16:32 by tetsuo-kanome
2020年03月29日 16:32 by tetsuo-kanome

【1号機のベントのために決死隊が作業するシーン】

 2011年3月11日に発生しました東日本大震災、福島第一原発事故を描く映画『Fukushima 50』が2020年3月6日に全国公開されました。私は、首都圏が新型コロナウィルスで厳戒態勢の中、公開三日目の朝一番で観に行きました。邦画史上最大級のスケールとリアリティに加え、全ての登場人物が生死をかけた状況に追い込まれ、感情むき出しでぶつかり合う様子が克明に描かれております。公開週の映画ランキング第一位で、土曜日と日曜日の2日間で動員10万6000人、興収1億4300万円を記録しました。

 原作は、ジャーナリスト・門田隆将氏が90人以上の関係者への取材をもとにつづったノンフィクション本「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。2011年3月11日午後2時46分――マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大の地震が発生し、巨大津波が福島第一原子力発電所(通称イチエフ)を襲いました。本作は、事故対応のため死を覚悟して発電所に残り、世界中のメディアから“Fukushima 50”と呼ばれた福島出身の作業員たちの真実を描き出しております。 福島第一原発1・2号機当直長、伊崎利夫役を佐藤浩市、福島第一原発所長・吉田昌郎役を渡辺謙が演じ、5・6号機当直副長、前田拓実役に吉岡秀隆、緊急時対策室総務班・浅野真理役として安田成美が出演。そのほか、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎ら豪華キャストが結集しております。 SBO(Station Black Out=全電源喪失)に見舞われた福島第一原発の様子を活写。原子炉建屋内に突入し、人の手で作業するしかないという状況下で、伊崎は自分とともに危険な作業を行うメンバーを募るという苦渋の決断を迫られます。さらに避難所でニュースを見つめ、祈り待ち続ける彼らの家族、福島を思う地元メディア、自衛隊、“トモダチ作戦”を実施するアメリカ軍も登場。「そんなことも決められねえのか本店は!現場の人間、体張ってんだよ!」と現場の作業員を代弁して戦う吉田所長。「最後に何とかしなきゃいけないのは、現場にいる俺たちだ!」と覚悟を決める伊崎の姿をとらえております。 当時原発内で戦っていた作業員の方々は、海外から「Fukushima 50」と呼ばれており、ほとんどが地元福島の方でした。我々と同じ一般人で、悩み、怒り、泣き、いろんな思いで作業されていました。頭の中には常に避難したご家族の事があったそうです。こうした方々のドラマを物語の中心に据えながら、報道だけではわからない事故の真実を描こうと決めました。大自然の脅威、人間の慢心という部分も重要なテーマです。本作は門田隆将さんの「死の淵を見た男」を原作としており、非常にリアルな内容を映像化しています。東日本大震災からは9年が経ちましたが、震災ならびに事故の風化が懸念されています。被災地の復興や福島第一原発の廃炉作業等も取り組むべき課題が多々あります。

 佐藤浩市さんは、「東日本大震災と原発事故からまだ9年なのか、もう9年なのか、思いは人それぞれ、日本人の中でもみんな違うと思う。是か非かということではなく、未来に生きる自分たちにとって、何が必要か、何が不必要か、おのおの感じていただきたい。そのためだけに僕はやってきました」と語っております。 渡辺謙さんは、「原発がいいとか悪いとか、そういうことだけをうたう映画ではない。未来にとって、僕たちの子どもの世代、孫の世代に、これが社会にとってどうなのか検証する材料にしてほしい」

 まさに、日本映画の歴史を変える超大作です。全編を通じて「凄い!」の一言です。一人でも多く観て頂きたい映画です。

【記者 鹿目 哲生】

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