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ザ・戊辰研マガジン

2022年02月号 vol.52 追悼特別版

「星亮一先生、安らかにお眠りください……」 鈴木 晋(丹下)

2022年02月06日 10:36 by tange

 星先生から初めてご厚誼をいただいたのは、平成20年のことでした。著作「女たちの会津戦争(平凡社新書)」に次の記述を見つけ、ご連絡したのが始まりでした。
 「……国老萱野権兵衛の実弟、鈴木丹下が身につけていた銀の時計を取り出して、『もはや不要なので君に進ぜよう』と梶之助に与えた」
 私の高祖父鈴木丹下が萱野権兵衛の実弟だったことを初めて知り、また明治学院創設者の一人井深梶之助へ銀の時計を与えていた事実に驚き、その典拠を教えていただくようにお願いしたのです。すぐに、それは明治学院発行「井深梶之助とその時代」である、とご返事がありました。
 私は、この応答の際、丹下の娘光子の回想記を所持していることをお伝えしました。回想記「光子」は、曾祖母の傘寿を祝い、その手記を祖父威が自家出版し近しい人たちに配っていたので、我が家にもあったのです。
 ご要望に応えて、所持していた「光子」のコピーを先生へお送りしました。

 平成21年1月初版発行の「会津籠城戦の三十日(河出書房新社)」に10ページにわたって、「光子」の前半部分が原文のまま転載されました。
 「『鈴木光子の回想(鈴木威氏所蔵)』……梶之助が城中で時計をもらった鈴木丹下の娘光子の手記である。全文が広く公表されるのは、これが初めてである。しっかりした文体の、貴重な記録である」と、書き出されています。

 回想記「光子」は私本でありましたが、会津城下の戦い、戦禍を逃れて藩境沿いの彷徨、斗南への移住とそこでの塗炭の生活、会津若松への帰還などが有りのままに綴られ、一部の歴史家には注目されていました。しかし、著作者が明らかでないことが、引用をためらわせていたのです。
 「光子」のコピーをお送りして数日後、先生から祖父の著作使用の許諾を求められました。私が祖父の著作権を正しく継承しているかは疑問でしたが、「先生のご本に引用していただけましたら、曾祖母も祖父も、あの世できっと大喜びすることと思います」と、連絡させていただきました。
 曾祖母は昭和32年、祖父は33年(1958)と立て続けに亡くなりました。
 冒頭に述べましたように、私が先生と上記のやり取りをしましたのは平成20年(2008)で、まさに祖父の没後50年だったのです。つまり、祖父の著作権が消滅した年でした。その翌年、曾祖母と祖父の残した私本が、先生のおかげで初めて公になったのです。
 私は、これを偶然と片付けてはいけないと思いました。それ以来ずっと、星先生と先祖との因縁を自分なりに感じていました。

 先生から、幕末維新について、話をお聞きしたり著作を通して沢山のことを学びました。その中で私にとって最も意義深かったのは、曾祖母の母方の祖父・小野権之丞に関して「大変に興味深い人物」と告げられたことでした。回想記「光子」に一度だけ登場する人物で、私は完全に見過ごしていました。
 その後、ご教示いただいた「小野権之丞日記」のコピーを図書館で入手し、ほとんど漢文のようで、しかも欠落が多い日記の解読に努めました。
 旧弊と思われていた会津藩士の一人が、幕末から維新にかけて、京都で公用方として六年にわたり公家や諸藩士との外交に務め、西の福山、広島から福岡まで藩主の命を受けて旅し、北の箱館にも身を置いていたのです。
 小野は確かに、「大変に興味深い人物」でした。私の先祖の中に、このような人物がいたことを知り得たのも、先生のおかげです。



 写真は、東日本大震災による宮城県南三陸町・防災対策庁舎の惨状です。現地での調査に赴かれた先生が、画面左の片隅に写っています。
 先生は、作家として歴史の常識に果敢に切り込む一方、ジャーナリスト精神を生涯忘れていませんでした。発災直後から文筆をもって、大震災の実相を広く世に伝え続けられたのです。
 星亮一先生へ深い感謝の気持ちを捧げ、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

鈴木 晋(丹下)

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