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『戊辰白河口戦争記』を読む(3)白河の位置

2020年08月03日 17:17 by chu-emon

古より白河は「関」の名で知られています。西に奥羽山脈の南端である那須連山、東に阿武隈山地、その間を南北に奥州街道が通りますが、平野は栃木・福島県境のところで高原に仕切られた形です。白河はこの高原の中央に位置して、まさに「関」というような地形であることが見てとれます。

(地理院地図)


(大田原から須賀川までの断面図=地理院地図で作成)

 もっともこの高原はそれほど険峻なものではありませんから、現代の私たちが新幹線や自動車で北へ向かえば、なだらかに連なる幾つかの丘陵と田畑を越えるうちに、いつの間にか通り過ぎてしまうことでしょう。
 しかし戊辰における白河戦争は、まさにこの高原上を戦場として戦われました。両軍の兵士は、高原上に点在する丘陵や川に拠って銃刀を振るい、四斤山砲を引き回して戦ったのです。


(阿武隈川土手から西方の山並みを望む)

 戦闘期間は慶応4年閏4月20日から7月28日まで、ちょうど雨期にあたりましたから、那須のお山から湧く雲が押し寄せて、ほとんど雨天であったと伝えられています。白河近郊には天神社・雷神社が多く祀られており、もとより雨・雷は多かったものと思われますが、この戊辰年はことのほか雨が多かったのでしょう。
 白河の標高は駅前でも350mほどあり(東京タワーの高さくらい)、この高原は南方の那珂川水系(関東地方)と北方の阿武隈川水系(東北地方)の分水嶺でもあります。
 豊富な水に洗われてそこここに岩盤が露出していますが、これは「白河石」の名で様々な用途に石材として供給されてきました。


(市内遊歩道に岩盤が露出した箇所)


(市内天神社の狛犬)

白河小峰城は「東北三名城」の一つにも数えられ、東北地方では珍しい総石垣造りの城ですが、この地元での石材産出がそれを可能にしたのです。


(白河小峰城 本丸)

 さて、こんな立派なお城のある白河なのに、「城下町」といった武士臭い雰囲気がありません。
 慶応3年8月まで阿部家が領地としていましたが隣の棚倉へ移封され、白河は幕府領となって戊辰の年を迎えることになりました。そして幕府領から新政府領へ。藩知事の時代にも白河に大名知事が入ることはありませんでした。ずっと町人の町なのです。
 権力争奪の記憶がない白河の人々、それは戊辰戦後の勝者敗者を問わない慰霊につながっていったと思われます。怨みを抱えるでもなく、志を継ぐ!でもなく・・・異郷で戦闘に倒れた人々をただただ悼み供養したのです。

 それは白河の人々が戦争を避けられたということではありません。長期にわたり住地は戦地となり、時に戦闘に巻き込まれ、人・モノを徴発され、田畑は踏み荒らされ、家屋を焼き払われるなど、散々に被害を被ったのです。
 白河の人々が語る「戦争」は被害の部分が多くを占めますが、「我が殿」「我が藩」というバイアスのかかっていない民衆の視点は、戦争というものの姿をよく描き出すうえで重要だと思います。戦闘の当事者ではありませんが、戦争の被害を等しく被った者として、戦死者へのまなざしは同じ人間としての感情に根差しています。

 
(白河市松並 「戦死墓」碑)

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「戊辰白河口戦争記 学習ノート」

http://home.h05.itscom.net/tomi/rekisi/sirakawa/bosin/bosin-sirakawa.htm

【記者 冨田悦哉】

 

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