ザ・戊辰研マガジン

2018年09月号 vol.11

「吉村寅太郎隊  風の森峠に布陣」

2018年09月03日 21:00 by tama1

西口紋太郎著「天誅組重阪峠」より 文久三年(1863)8月25日、吉村寅太郎率いる第二隊は「風の森峠」に陣を布いた。

奈良県御所市鴨神「風の森神社」 説明板によると、本社は、旧高野街道風の森峠に位置しています。 御祭神は、志那都比古神(しなつひこのかみ)をお祀りしています。志那都比古神は風の 神であり、古事記、日本書記には風の神に因んだ事柄が記載されています。また、葛城 地方は、日本の水稲栽培の発祥の地ともいわれており、風の神は、五穀みのりを、風水害 から守る農業神としてまつられています。 日本では、古くから風の神に対する信仰があり、毎年旧六月には、各地で薙鎌を立てて、 豊作を祈る風祭が行われているとあります。 さて、本題の天誅組吉村隊に話を戻します。 ここ、風の森峠に陣を布いたのは、郡山藩柳沢の兵が御所(ごせ)へ進出したという情報 が入り、これを迎え撃つためなのです。 神社境内の一画には「天誅組重阪峠」の著者西口紋太郎氏建立の石碑が建っています。

討幕 明治維新の魁天誅組布陣百二十年記念  初秋の爽やかな、風が吹き抜ける時、吉村寅太郎の率いる天誅組第二隊の志士は到着し 陣を布いたのである。そして、鎖国日本の夜明けを告げる陣太鼓の音がこの頂上より大和 国に轟き渡りホラ貝の音が高らかに鳴り響いた。それは文久三年(1863)八月二十五日の 昼頃であった。 西口紋太郎著「天誅組重阪峠」の一説より 昭和五十八年(1983)八月二十五日紋太郎著 昼でも薄暗く小さな祠を前に吉村隊は戦勝を祈願したのであろう。目を閉じてしばし瞑想 してみるに、155年経った現在でも、その場面が浮かんでくるようでした。 さて、頂上の神に戦勝の祈願を了えた第二隊長吉村寅太郎は、頂上近くの南郷屋徳平宅の 縁側に腰を下ろして休息していた。南郷屋徳平とは現当主米田勇氏の曽祖父である。と 米田(こめだ)家は風の森神社石段下に「米田」という表札があるお宅ですぐに見つかり ました。

間口、奥行きとも当時の面影を残す、大きなお家でした。 風の森~高鴨神社~名柄へと続く「美しい日本の歩きたくなる道500選」にも選ばれて いる「葛城の道」が家の前を通っています。 例によってインタ-ホ-ンを押して訪問の目的を申し上げ、お話をお伺いたく申し出ます と、奥様が出て来られ、親切にもお家の中へ通してくださいました。 応接居間には、沢山の仏像彫刻作品が並べられていました。6年前に亡くなられた勇氏 趣味で創作されたもののようです。 奥様のお話では米田家は代々「南郷屋」と呼ばれたそうで、近くの南郷遺跡地区の名称 からとったのか、屋号だそうです。その曽祖父徳平さんから語り継がれている物語がこの 本に、下記のように記されています。 縁側に休息した吉村寅太郎は村役人や百姓を集めて、米の徴発を命じたが、近くには、 徴発に応じられる農家は一軒もない。しかし、風の森峠の西方、高鴨神社前のいはゆる 葛城の道を北へ約1キロメ-トルほど行くと北窪という村がある。そこに窪田助左衛門と いう大長者がいた。窪田は近郊近在きっての大地主で、毎年質米(しちまい)、年貢米合 せて、千石以上の米を倉庫に積み上げたといわれていて、名字帯刀まで許された実力者 であった。徳平からその話を聞いた吉村は直ちに窪田へ隊士を派遣した。 この米の徴発の状況について、風の森峠よりすぐ西の、鴨神の幸田政治郎翁は古い昔の 記憶を思い起こしながら、ぽつんぽつんと語ってくれた・・・その話は次々回に。

この広い庭に村役人や百姓を集めて、吉村寅太郎は米の徴発を指示したのだろうか? 金剛山から吹き降ろす風は稲作に欠かせないものであるが、反面、台風などの暴風は人に 大きな被害をもたらします。そのためにこの地でも風の神が祀られるようになったのだろう。 寅太郎も縁側に腰を下ろして金剛山を眺めたのであろう。見事な景観は今も昔も変わらぬ ものでしょう。私も、眼前に広がる金剛山麓に思わず見惚れてしまい、暫し動くことが出 来ませんでした。 「風の森」といえば吉村寅太郎が陣を布いた7日前、この地を通過した同志伴林光平の ことを書かねばなりません。それは次回に。

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