春はウグイス、夏はホトトギス。その季節の到来を告げる代表的な鳥として名高いですね。特にその年に初めて聞くホトトギスの鳴き声は「忍音」といわれ珍重されました。「枕草子」では、「忍音」を人より早く聞こうと夜を徹して待つ場面があります。他にもホトトギスは文学において数多く登場します。
名前だけだと何となくイメージのいい鳥のようですが、ホトトギスは他の鳥が作り終えた巣に卵を産みつけ、子育ても全て任せてしまうという「托卵」の習性があるのです。托卵の相手はウグイスが多く、ウグイスが巣から離れている隙に卵を産みつけ、卵の数が不自然にならないようウグイスの卵を巣から落として数を合わせます。ウグイスはそれに気づかず、ホトトギスの卵も一緒に暖めていきます。数日後、ウグイスよりも先に、ホトトギスのヒナが産まれると、ホトトギスのヒナは、まだ生まれていないウグイスの卵を全て落としてしまうのです。それでもウグイスは、ホトトギスのヒナにエサを与えるのです。なんと悪い鳥なのでしょうか。
岡山県では当初、ホトトギスが県の鳥でありましたが、ホトトギスの托卵性の習性からくるイメージや、親近感が薄いことなどから、県民の鳥にはふさわしくないと多くの意見が出て、キジに変更されたという経緯があります。
ホトトギスは文学によく出てきます。明治の文豪、徳冨蘆花の小説に「不如帰(ホトトギス)」という有名な小説があります。この小説「ホトトギス」で悲劇のヒロインのモデルになった大山信子という女性は、大山巌の長女。大山巌といえば幕末明治、戊辰戦争を語る上では欠かせない薩摩の人物。そしてその大山巌と後妻として結婚したのが会津の大山捨松。その大山捨松がこの小説が原因で、ありもしない風評被害にあい、世間から大バッシングを浴びる事になる騒動があったのです。
いずれにしても、ホトトギスというのはあまり良いイメージがないようです。ホトトギスの雄は「キヨキョキョキョ」と鳴くそうです。やはりこの鳴き声もイメージが良くありませんね。
「鳴かぬなら ○○○○ ホトトギス」という句があります。織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三人の性格を端的に現した句として広く知れ渡っています。実際は三人がそれぞれ自分で詠んだ句ではなく、後世の人が「この人ならこんな性格だろう」と表現して見せた句であるのです。
代表的な句と私が作った句を取り混ぜ、ここに紹介します。
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」
ゆっくりのんびりチャンスをうかがう姿勢、現代社会で欠ける部分ですね。のんびり生きてみたいものです。
「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」
進歩的考えですね。創意工夫はノーベル賞ものです。
「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」
本来の役目を果たさないのなら抹消してしまえといった考えですね。
「鳴かぬなら それもまた良し ホトトギス」
どんな人材でも活かし育てる 。経営の神様、松下幸之助タイプですね。
「鳴かぬなら 放してやろう ホトトギス」
鳴かない鳥は可哀そうですが、放してしまえばそこに何も残りません。
「鳴かぬなら 自分が鳴こう ホトトギス」
自分が鳴くのは簡単ですが、鳴かせて見せようという努力が無い限り、人の上に立つ指導者にはなれません。私も人に教えるより面倒臭いので自分でやってしまえ!というタイプなので、これでは進歩がありませんね。
「鳴かぬなら 家にこもろう ホトトギス」
マイナス思考で最悪なパターン。家にこもって何をしようというのか。
「鳴かぬなら 餌を増やそう ホトトギス」
餌を増やすとお腹がいっぱいになって眠ってしまうかも知れません。
「鳴かぬなら 何とかしろよ ホトトギス」
他力本願もはなはだし。自分で対処する事が大事です。
「鳴かぬなら お前鳴けよと ホトトギス」
無理やり物事を押し付けるのはかえって逆効果。ホトトギスは口をつむんで身動きしなくなります。
「鳴かぬなら お願い鳴いてと ホトトギス」
男は女に弱いもので、泣きつかれると許してしまいます。そして罠にはまるのです。
「鳴かぬなら 今すぐ切腹 ホトトギス」
なんと恐ろしや。ホトトギスは刀が持てません。
(記者:関根)
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