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2019年10月号 vol.24

大和・天領の百姓一揆 「芝村騒動」 

2019年09月30日 18:08 by tama1
2019年09月30日 18:08 by tama1

大和・天領の百姓一揆 「芝村騒動」 そのⅣ

 出頭命令、二十三名江戸に護送。 十一月二日に最初の箱訴を行ったものの、一向に京都町奉行所からの沙汰がないの で、繰り返し箱訴を重ねましたが、奉行所は無反応。宿代もかさみ、飯代にも困る始 末に、村の代表として旅立ってきた百姓たちはどうしてよいか分からず、ますます焦 燥感を募らせていました。

  実のところ、奉行所は箱訴を無視していたわけではなく、芝村藩に事情を聴き、また 幕府の指示を仰ぎながら、この結末をどうつけるのか、検討していたといいます。 百姓たちの願いも空しく、京都に出てきてから早二か月を迎えようとする十二月 二十二日、彼らの地元の村々に芝村藩から出頭を命じる指紙(さしがみ)が届きます。なお、この時点では、京都に滞在していた百姓たちは指紙が届いたことは知らな かったはずです。

  芝村藩から出頭命令をうけた百姓は、常盤村から庄屋の孫右衛門以下六名、葛本村か らは庄屋の小左衛門以下五名、新賀村からは庄屋の彦惣以下三名及び膳手村 からは庄屋の三郎助以下四名の、四村で合計二十二名の者たちでした。

  この後の状況は「宝暦箱訴一件御吟味次第書」という文書に詳しく載せられていま す。

○宝暦箱訴一件御吟味次第書

 宝暦三年十二月二十二日  

 (常盤村・森文書)

江戸御勘定奉行所様

和州十市郡

式下郡 村々御吟味之次第

葛下郡

一、芝村役所より指書(呼出状)がきて召し出されることとなった。庄屋、年寄、 百姓代の二人宛てで、常盤村孫右衛門、源助、宗助、藤兵衛、忠助、久三郎、六次郎 の 七人を召し出すように仰せ付けられたが、宗助一人を村に残し、その外の六人を 江戸表から召し出すよう仰せ付けられたため、二十五日暮れ、芝村役所に参り、 二十六日江戸へ出立、旅に出た。供の宗七と都合七人で罷り下った。

一、葛本村 庄屋・年寄の小左衛門、善兵衛、平兵衛、太兵衛、弥右衛門、供の清 六、 都合六人

一、新賀村 庄屋の彦惣、藤四郎、年寄の甚兵衛、新三郎、都合四人

一、膳夫村 庄屋の三郎助、新六、年寄の武助、孫三郎、付人弥三郎、都合五人  しめて四カ村の人数二十三人

  四村の庄屋、年寄全員が吟味されますが、幕府役人は「大和はたいへんよい国であ る。 木綿もよく作っているし、芝村藩の年貢取り立てには何の問題もない」と責め立てま す。 庄屋と年寄たちは二割半の増高無地に年貢がかかることは理不尽だと主張するも、そ れは 百姓の心得違いであるとして、百姓側の言い分は受け付けて貰えなかったのです。

  大和の天領では、延宝五年(1748)から七年にかけて延宝検地(新検地)が実施され ています。 それまでの文禄検地(古検地。1594-95)では六尺三寸(約191cm)をもって一 間とし、一間四方をもって一歩(一坪)としていましたが、延宝検地では一間が六尺 (約182cm)とされ、一坪3.64平方メ-トルだったものが3.31平方メートル に縮小 されました。一反を三00歩(坪)とすることはそのままですが、坪面積が約一割縮 小さ れた結果、今まで一反であった田が一反一畝として計上されることになりました。

  箱訴した村々はこの新検地を免れていましたから、二割半の増高無地があったとして も、 古検地の村には一割前後の畝延びがあるはずであり、しかも二毛作や綿作の普及など 農 作物の生産力が大きく伸びていることも含めて、「百姓之心得違」として、百姓の言 い分 を受け付けなかったのです。

「御検見坪六尺三寸二テ候」、一間(六尺)竿では「壱畝歩ニハ掛リ不申」と主張す る村 側の言い分との間には大きな隔たりがあったことが分かります。

  そもそも勘定奉行の神尾春央は、関東に比べて大和の生産力の高いことや百姓の奢り を 指摘し、高免などと訴訟申し出てくれば、何百人でも江戸表へ呼び出すと脅している ぐら いですから、村役人がいくら二割半の無地への課税の理不尽さを訴えても聞き入れて もら えなかったのは明らかだったようです。

続く、、

春日神社

 

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