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【幕末維新折々の記・十七】同志社大学クラーク記念館

2021年05月06日 09:54 by tange

 明治8年(1875)、新島襄が妻八重の兄で旧会津藩士、山本覚馬らの協力を得て創設した同志社英学校は翌年、今出川の薩摩藩屋敷跡に新たに木造の校舎数棟を建て本格的に始動した。旧薩摩藩の邸地は、山本覚馬が所有していたもので、この時同志社へ寄贈された。そこが現在の同志社大学今出川キャンパスの中核となる。
 今出川キャンパスには、明治17年(1884)から概ね10年に亘って完成した五棟の煉瓦造洋風建築が、当時のままに残されている。すなわち、彰栄館(17年竣工)、礼拝堂(19年)、有終館(20年)、ハリス理化学館(23年)、クラーク記念館(26年)で、すべてが国指定の重要文化財だ。
 五棟の洋風建築は、大きな建造物ではないが王朝時代の雅な趣を残す京都御所と臨済宗相国寺の伽藍にそれぞれ在る伝統建築群へ割って入り、確かな存在感を示している。

 ただ、五棟すべてが完全な西洋建築とは言えない。特に最初に建設された彰栄館は、外壁を煉瓦積みとしているだけで、内側はそっくり日本の伝統的な木造軸組工法で造られた。屋根も和小屋で、和瓦が葺かれ鬼瓦まで載せられた。
 彰栄館は、大工棟梁・小嶋佐兵衛が必死に学んで煉瓦造洋風建築を造ろうとしたが、未だ力及ばず、木造和風建築に限りなく近かったのである。
 その後に建てられた煉瓦造建築は、棟梁たちの血の滲むような努力によって、たった10年ほどで西洋建築に近付いていく。変遷していった五棟は、明治の人々が短期間に我が国の近代化を成し遂げたことを示す証しとして、今に残されたのだ。
 
 新島襄は、16年(1883)の頃から同志社英学校を大学に昇格させる活動を始め、大学設立のための趣旨表明や資金募集に奔走していた。その過労からか、もともと病気がちであった彼は、22年の暮れに群馬県前橋で倒れた。翌23年1月23日、静養先の神奈川県大磯で、八重に看取られながら世を去る。享年46。決して長くはないが波瀾に富んだ生涯だった。
 永眠後直ちに、新島襄の名を冠した神学館建設の募金活動が、卒業生たちによって始まった。しかし、寄付金はなかなか集まらず、神学館建設は絶望的な状況になる。
 そんな時、米国のクラーク夫妻から約一万ドルの寄付があり、25年に着工することができた。寄付の申し出に際し夫妻の早世した子息の名前を館名に入れるという条件が付され、竣工後「クラーク神学館」と呼ばれてきた。昭和38年、別に神学館ができたため、「クラーク記念館」と改称され今に至る。

 烏丸通りに面した西門を入り、キャンパスを一直線に貫く緑濃い並木道を進めば、左側に彰栄館、礼拝堂、ハリス理化学館が並び、一番奥にクラーク記念館が見えてくる。地上から天に突き出るような塔が、まず目に捉えられる。一、二階の教室の西南の角を斜めに突出させ、その上に塔屋を載せただけなのに、独立して立つ塔のような印象だ。ドイツから来日した建築家・ゼールの絶妙なデザインである。
 クラーク記念館の内外は、ドイツ人らしい緻密さと几帳面さに裏付けられ、華美でなく各部のプロポーションの良さによる美しさが際立ち、教育施設として大変に好ましいようすだ。
 漆喰で仕上げられた間仕切り壁は、厚さを扉のところで測ると50センチほどあり、間違いなく煉瓦による構造躯体なのが分かる。二階チャペルの船底天井を受けているアーチ状の梁などと相まって、それは完全な西洋建築である。

 クラーク記念館を完成させたのは、彰栄館の棟梁・小嶋佐兵衛だ。彼は、新島襄の存命中に建設されたハリス理化学館でも、棟梁として働いている。新島の彼に寄せる信頼が厚かったことがうかがえる。その信頼に応えようと小嶋は、本格的な西洋建築実現のため、10年余り力を尽くしたのだ。彼もまた、近代日本の勃興期を確かに生きた一人だった。



同志社大学クラーク記念館

 
次号、「新島旧邸」

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