ザ・戊辰研マガジン

2018年11月号 vol.13

【都内、幕末維新史跡・八】大倉喜八郎と東京経済大学

2018年11月06日 12:20 by tange

 平成12年(2000)10月6日、快晴の日、ホテルオークラ東京本館にたくさんの人々が集まり、東京経済大学創立100周年記念の式典が開かれた。そのホテルの所在地は、川越藩主であった松平大和守の屋敷跡で、明治の時に赤坂葵町となり、大倉財閥の創設者・大倉喜八郎が邸宅を構えた場所である。現在の地名は港区虎ノ門。
 大倉喜八郎は、邸内の敷地の一部を提供し校舎を建設、さらに年10万円で5年間分の運営費を寄付して、大倉商業学校を設立した。同校は、実業学校令に基づいて明治33年(1900)7月に文部省の認可を得、同年9月に開校した。この大倉商業学校が発展して現在の東京経済大学になり、創立100周年を迎えたのだ。
 大倉は、自らが創設した大倉組が海外に飛躍し業績を伸ばしていくなかで、諸外国との商売を円滑に遂行するためには、経済の仕組、商業の知識、道徳そして語学などの高度の教育が必要と実感し、学校の設立を決心するに到ったのである。ちなみに大倉組は、三井・三菱に先駆け、我国で初めて英国ロンドンに支店を開設するなど先見性に富んだ複合企業だった。
 旧大倉邸内、虎ノ門ツインビルディング敷地内で江戸見坂に面し、東京経済大学発祥の碑がひっそりとある。


東京経済大学発祥の地、記念碑

 大倉喜八郎は、天保8年(1837)9月24日、越後の新発田で名主の子として生まれた。新発田を17歳で離れ、江戸に出た。奉公生活の後、乾物店を開き、さらに神田和泉橋に鉄砲店を開業する。それは、戊辰戦争勃発前年の慶応3年(1867年)のことで、まさに時機を得た西洋銃器の販売業であった。彼は、その後もたびたびあるのだが、時代の流れを読むことについて天才的な才能を持っていた。そして、巨万の富を得た。
 新発田藩は、戊辰戦争の当初、短い期間であったが奥羽越列藩同盟に与していた。大倉喜八郎もまた‘明治を支えた賊軍の男たち’の一人なのであろうか。

 大倉商業学校は、時の流れとともに発展、大正9年(1920)に大倉高等商業学校となり、昭和19年(1944)には大倉経済専門学校と校名を変更する。さらに、学生数も増え手狭になっていた発祥地の施設を20年3月の米軍による空襲で失い、戦後、もっと広いキャンパスで再出発する必要があった。
 昭和21年、学園は国分寺市へ移転する。24年、大学に昇格し東京経済大学と命名された。そして、その地で創立100周年を迎えることになるのである。
 今、国分寺キャンパスの一画に100周年記念館が建っている。切り妻屋根で、正面に花崗岩で仕上げられた四本の柱が立つ堂々とした建築である。四本の柱は、同学の文系四学部体制を表象するものとしてデザインされた。


東京経済大学100周年記念館

 同学は、平成17年、「東京経済大学の100年」を出版している。そこには、100周年記念館について、『大倉高商の講堂をイメージして設計された』と記されている。
大正12年(1923)9月、関東大震災が首都圏を襲い、大倉高等商業学校となって間も無い学園も壊滅的な被害を受ける。直ぐに被災した校舎群が修復され、再起したキャンパスのシンボルとして、大倉喜八郎の指示で新たに講堂が建設された。
 その外観写真だけが残されている。切り妻屋根で、正面に四本の柱型がやはりデザインされている。木造二階建てのあまり大きくない建築であるが、堂々とした表情を持ち、災害からの復興という記念性も具備している。
 大倉高商の講堂正面、四本の柱が意味するところは、今となっては全く不明である。時代の先を読む天才だった大倉が、自分が設立した学校の進むべき四つの方向を見通し、四本の柱に託していたのかもしれない。つまり、現在の東京経済大学の四学部体制である。
 大倉喜八郎は、この講堂完成の後、昭和3年にこの世を去った。91年の波瀾万丈の生涯だった。文京区大塚の護国寺(真言宗)に眠っている。  

 ホテルオークラ東京は、喜八郎の子息・喜七郎によって昭和37年に虎ノ門の旧大倉邸内に開業、現在、全面的な建て替え工事が進行中である。

(鈴木 晋)


建て替え工事中のホテルオークラ東京・本館


(次回は、会津藩の江戸屋敷について記します)

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